東京山手線内の中心駅

特定都区市内の一つに「東京都区内」があります。エリアは東京23区内です。
一方、「東京山手線内」というエリアもあります。これは、まぁるい緑の山手線の全駅と、その内側にある御茶ノ水千駄ヶ谷間の駅も含みます。
「東京山手線内」はエリアのすべてが「東京都区内」と重複しているわけですが、「東京都区内」は東京駅から200kmを超える駅を対象とする場合に適用され、「東京山手線内」は同じく100kmを超え200km以下の駅を対象とする場合に適用されます。
いずれも中心駅は東京駅とされていますが、旅客営業規則をみてみましょう。

〜〜〜〜
旅客営業規則
(東京山手線内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)
第87条 東京山手線内にある駅と、【中心駅】から片道の営業キロが 100キロメートルを超え200キロメートル以下の区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該【中心駅】を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。(後略)
〜〜〜〜

非常に分かりにくい文章ですが、【中心駅】という文言はあっても、その中心駅が東京駅であることは、この第87条では明確に規定されていません。一体、「東京山手線内」という乗車券の場合、その運賃は東京駅からの(又は東京駅までの)ものでよいのでしょうか?

これは法令文に読みなれていないと、中心駅が東京駅であることは分かりません。

まず、冒頭の「東京山手線内にある駅と、」ですが、この「東京山手線内」とは一体何なのでしょうか?法令文において特定の言葉が唐突に出てくることはありません。必ずどこかで定義されているはずです。ではどこに定義されているのでしょうか?条文をさかのぼると、第78条に出てきました。

〜〜〜〜
電車特定区間内等の大人片道普通旅客運賃)
第78条 次の各号に掲げる区間内相互発着の場合の大人片道普通旅客運賃は、第77条に規定する賃率にかかわらず、当該各号に定める賃率によつて、同条の規定を適用して計算した額とする。
(1) 第86条第1号に掲げる図中の太線区間【(以下「東京山手線内」という。)】及び同条第5号に掲げる図中の太線区間(以下「大阪環状線内」という。)の駅相互発着のときの賃率は、次のとおりとする。(後略)
〜〜〜〜

(以下「東京山手線内」という。)という文言がありました。つまり、「東京山手線内」とは「第86条第1号に掲げる図中の太線区間」であることが明確に定義されていたのです。

では、第86条第1号はどのような規定なのでしょうか?

〜〜〜〜
(特定都区市内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)
第86条 次の各号の図に掲げる東京都区内、横浜市内(川崎駅、尻手駅八丁畷駅及び川崎新町駅並びに鶴見線各駅を含む。)、名古屋市内、京都市内、大阪市内(新加美駅を除く。)、神戸市内(道場駅を除く。)、広島市内(海田市駅及び向洋駅を含む。)、北九州市内、福岡市内(姪浜駅下山門駅今宿駅九大学研都市駅及び周船寺駅を除く。)、仙台市内又は札幌市内(以下これらを「特定都区市内」という。)にある駅と、【当該各号に掲げる当該特定都区市内の◎印の駅(以下「中心駅」という。)】から片道の営業キロが 200キロメートルを超える区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、当該中心駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。
ただし、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過するとき、又は特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときを除く。

(1)東京都区内(図略)(後略)
〜〜〜〜

うわあ〜、さらにややこしくなってしまいました。

(以下「○○」という。)という部分は言葉の定義です。よって、「当該各号に掲げる当該特定都区市内の◎印の駅(以下「中心駅」という。)」ということは、「中心駅」とは「当該各号に掲げる当該特定都区市内の◎印の駅」ということになります。この場合の「当該各号に掲げる当該特定都区市内」とは「第1号」ですから「東京都区内」を意味します。

ということは、第87条に戻りますが、

〜〜〜〜
第87条 東京山手線内にある駅と、【中心駅】から片道の営業キロが(後略)
〜〜〜〜

というのはつまり、

〜〜〜〜
第87条 「第86条第1号に掲げる図中の太線区間」にある駅と、「東京都区内の◎印の駅」から片道の営業キロが(後略)
〜〜〜〜

ということと同じなのです。だから「東京山手線内」の中心駅は東京駅で間違いなかったんですね。あ〜よかった。

他の条文を併せ読むのは本当に疲れますね。